死月

辛くて苦しくて凍てつくような、冬が終わった。いつしか私の耳元で甘い言葉を囁く天使様も冷たい突風に流されて消えてしまった。「私も消えたいよ」

なんて呟いてもなにも現実は変わらない。ただ私は霞む手すりの無い階段を淡々と登る。その先に何かあると信じて。残酷に「今」は流れていく。必死に幸福を惰性に任せて追い求める私を置いて。

 

4月、薄桃色の枝垂桜、弾むピチカート、段々遠のくあなたの笑顔

 

きっと雲の上に理想郷なんて無い。重たい空気と何処からか垂れ下がるロープしか無いのだ。それでも私は歩き続ける、「私」は休符なんて要らない、メトロノームの音に身を任せて緩やかな不幸へと下っていくのかもしれない。分かってるよ、私には全部が理解出来るから