悟月

夏初月の終わり、世の中は疫病に狂い、テレビニュースのトピックは連日お祭り騒ぎだ。私はその祭囃子に乗ることは無くただ平凡な日々を過ごす、やるべき事、やらなきゃいけない事、忘れてはいけないものをこの喧騒を言い訳にして。

私は淡い雲の上に寝転びながら「幸福」とは何か、と虚空に尋ねる。空は何も言葉を返してはくれない。ただただ私を優しく、生温く包んでくれるだけであった。次に「自分」とは何か、と空に尋ねる。すると、「君には程遠い言葉だね」とくすくす笑った。

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

ナイフを、捨てる。あの雲は幸福なんかじゃなく、生温く濁ったただの空気に過ぎなかった。「残念だね」どこからか声がする。私はぶんぶんと頭を振った。汚れた手で顔を拭って私はまだまだ進む。いや、進まされてるのかもしれない。惰性で藻掻き、苦しみ、幸福を求め続ける私は憐れに見えるのだろうか。構わない、私は雲の亡骸を右手に無意味かもしれない、ただ煮え滾る感情を抑えるための1歩をまた踏み出した。

 

5月、高かったワンピースは着れないまま終わりそうです。